私たちの想い

壁の化粧士 山川静ニ

熊本で生まれ育った私ですが、中学卒業後、「都会で一旗揚げてやろう」と行ったのが大阪でした。そこで出会ったのが「左官」という仕事。手に職をつけようと軽い気持ちで飛び込んだこの世界が、まさか一生の仕事になるとは思っていませんでした。いえ、私以上に、私の両親や左官の師匠ですら「すぐに辞めるだろう」と思っていたようです(笑)。かれこれ50年近く昔の話です。

左官とは死ぬまで修業。当時は毎日の修業が辛く、若い私は何度もめげそうになっていました。ところが、1年ほど何とか続けたあたりから様子が変わりました。師匠から「上手くなったな」と褒められるようになり、自分の仕事で他の人に喜んでもらえることがやりがいになっていたのです。「ものづくり」の醍醐味を知り始めた瞬間だったと思います。

大阪で4年修業の後、京都へも赴きました。昔ながらの町屋や建物が数多い京都。左官の仕事にも、他にはない独特の技術がありました。例えば漆喰に“苆(すさ)”といわれる繊維を混ぜ込んで強度と質感を出す技法も、このとき学んだものです。のめり込むように様々な技を鍛える日々でした。

熊本に戻ってまず塗らせてもらったのは、実家の壁。父に頼み込んだのを覚えています。大阪と京都で身につけた腕をふるって、お城のように立派な壁に仕上げました。このことをきっかけに、「京都帰りの左官」と珍しがっていただき、有り難いことに、いろんな仕事をいただけるようになっていました。

100年持つ 漆喰との出逢い

左官の仕事は建物作りの一部ですから、仕事もその時代に流行っている素材や建て方に左右されるものです。京都では昔ながらの塗りも多く経験しましたが、昭和50年代は左官の仕事といえばセメント塗りでした。その後、樹脂で壁を塗る時代が来るや、「樹脂塗りのトップを目指そう!」と真っ先に飛びつきいろんな方法を研究し、意欲的に樹脂塗りに取り組みました。

ところがある日、お客様に言われたのです、「この壁、100年もちますか?」と。
私ははっとしました。樹脂の壁は、どんなに良い仕事をしたとしても、もって15年が良いところなのです。
「100年もつ壁」のことを考え始めると夜も眠れず、いろんな人に聞き、調べました。そこで知ったのが、耐久性がとても高い「土佐漆喰」のこと。
いても立ってもいられず高知県へ向かい、メーカーへと乗り込みました。台風が多い風土で育った、より強く美しい漆喰の技術。そこで見た職人の仕事は、妻と出会ったとき以来の(!)衝撃を私に与えました。
「日本にはこんな素晴らしい技術がある。この技を得たい、伝えたい!」

高知県に通っては、靴がすり切れるまで現地の左官を訪ねて回り、土佐漆喰の練習をさせてもらい、ついには現地の左官学校にも通いました。
土佐漆喰の技術がものになるまで、長い間家族には苦労をかけましたし、周囲からは「そんなことやって何になるんだ?」ともいわれました。でも、せずにはいられなかった。儲かるか、仕事になるかよりも、この技を受け継ぐべきだという使命感が先にあったのです。
 そのような日々を積み重ねたからこそ、いま「漆喰の技術は誰にも負けない!」と私は旨を張って言うことができます。

素材から手作りの「山川漆喰」。時代に寄り添いながら、本物の素材と技を伝えたい

漆喰の歴史は古く、5000年前のエジプトにもその存在が確認されています。左官としてのさまざまな技術を学んだ末に私がたどり着いたのは、そんな素材でした。

納得できる品質に仕上げるため、私は自分で漆喰を作っています。高知で学んだ技術を元に、熊本の風土に合うように、そして使いやすく美しくなるよう細かく調整し、練り上げます。化学のりは一切使わず、海藻のりを手作りするところから始めるのです。熊本で、漆喰の練り上げからおこなう左官職人は珍しいのではないかと思います。
丈夫で優しく、機能性も高い自然素材“漆喰”は、昔からの知恵の結晶です。高い品質の維持と共に、この本物の技を次世代に伝える意味もこめて、私は漆喰の手作りにこだわっています。
とはいえ、技術は進化してこそ技術たりえます。現代のライフスタイルに合わせてデザイン性を取り入れながら、山川漆喰ももっと進化していきます。最近、住宅でも自然素材の良さが見直されていますが、和でも洋でも、どんな家にも取り入れられ、高い効果を発揮するのが漆喰の大きな魅力です。
 本物の素材と本物の技術で、住まいの価値をより高めたい方、そして漆喰と共にナチュラルなライフスタイルを叶えたい方、まずはぜひ、私どものモデルルームにおいで頂き、漆喰の美しさと魅力を知ってください。

技術の差が大きく現れるのが左官。だからこそ、一生修業

「手が変われば姿が変わる」とも言われ、左官ほど上手い下手が如実に表れる仕事はないと思います。心のない仕事、ごまかしや上っ面の仕事、それでも塗ってしまえば表面は取り繕えるものの、いつか粗が出てしまう、そんなシビアな世界の中で私達は働いています。
だからこそ、儲けより何より、腕を磨き、つねに上を向いて進むことこそ、左官職人の使命だと思います。常に「これでいいのか?」と自らに問いながら、中身のある本物の仕事、自信を持って人に話せる仕事に取り組んでいます。
そのような本物の仕事が皆様の住まいを豊かに彩り、「ありがとう」と言ってもらえるときこそ、私達左官職人が最高に喜びを感じる瞬間です。

伝統の技を、次世代へ…新しい感性で“漆喰”は進化する!

父の背中を追うように左官の世界に飛び込みました。
厳しく指導してもらいながら修業する日々。まだまだ未熟者ですが、若者の少ない左官業界の中で、「もっとこの伝統の技を盛り上げたい」と頑張っています。

いま、昔ながらの建材である「漆喰」が、若いファミリー層を中心に見直されています。
自然素材だからこその子育て世代への優しさ、健康面へのよさ、調湿・調温などの高い機能性、そして素朴で懐かしい質感と、その魅力はあふれるばかり。昔懐かしい素材であっても、私達世代にとってこれは新しい発見です。

私自身もその魅力に日々のめりこむと共に、時代に合わせた形でもっと漆喰の魅力を広めたいと思っています。
若い世代だからこその新しいデザイン、新しい感性と、昔ながらの確かな技術が融合すれば、漆喰の可能性がもっと広がり、最高の仕事へとつながるはずです!
  決して楽な仕事ではありませんが、もっと漆喰の魅力を広げるために努力を重ねたいと情熱をもって取り組んでいます。
そして、一緒にこのすばらしい漆喰の世界を受け継いでいけるような、若い左官仲間を増やしていきたいというのが、今の一番の願いです。